COLUMN

Photo:Paul Kolnik

2017.4.19.WED | COLUMN

バランシンによる貴重な全幕作品

物語のないバレエ=プロットレス・バレエの傑作を多く振り付けたバランシンの貴重な全幕ものバレエ。ニューヨーク・リンカーンセンター製作のこの映像では、ニューヨーク・シティ・バレエの美しいダンサーと、チャイコフスキーを深く愛したバランシンの卓越した振付が楽しめる。有名なプティパ=イワノフ版に敬意を表しながらも、かなりオリジナルなシナリオに書き換えられており、大きな特徴としては子どもたちが最初から最後まで大活躍すること。子どもたちのダンスは「子役」の水準を超えて、ニューヨーク・シティ・バレエのダンサーに匹敵する存在感を放っており、バランシンの「小さなダンサーたちへの愛」がひしひしと伝わってくる。少女マリーとくるみ割り人形を踊るペアの子どもたちはたくさんの踊りとマイムをこなし、後半のディヴェルティスマンでも王座に座って、眠れる森の美女とデジレ王子さながらに、『中国の踊り』や『トレパック』を愛らしい表情で見つめているのだ。最後、トナカイのひくソリに乗って空に上がっていく演出も実にファンタジックだ。

Photo:Paul Kolnik

バランシンが追求した究極の女性美

カリンスカによる美しい衣装デザインは、このヴァージョンの大きな見どころ。夢のような色彩とユーモアを盛り込んだシルエット(『葦笛の踊り』の円形ケーキのようになったチュチュや、巨大なドレスから8人の子供たちが出てくるシークエンスにはびっくり!) に目を奪われる。金平糖の精のミーガン・フェアチャイルド、騎士ホアキン・デ・ルースのハイレベルな演技も、バランシン・スタイルを厳密に継承したもので、ロシアの伝統とモダニズムの融合が美しい振付によって表現されている。プリンシパル・ダンサーの中でもとりわけ華のあるアシュレイ・ボーダーの『露のしずくの精』はうっとりするほどチャーミングで、しなやかなアームスと複雑なステップ、ばねのある動きが素晴らしい。究極の女性美を追求したバランシンの理念が、彼のバレエ団のダンサーによって継承されているのはさすがである。

Photo:Paul Kolnik

『花のワルツ』はNYCBの真骨頂

オーケストラのテンポはかなり速めで、ベテラン女性指揮者のクロチルド・オトラントが颯爽とした姿でピットのプレイヤーたちを指示している様子も映し出されている。『花のワルツ』は音楽と振付が完全に一体化した技巧的な踊りで、NYCBの真骨頂を見る想い。前半での12mに伸びるクリスマスツリーの特殊効果など、さまざまな見どころが詰まった魔法のバレエである。

Profile
小田島久恵 音楽ライター
岩手県生まれ。岩手大学教育学部特設美術科卒。『rockin'on』誌で編集を務めたのち、フリーのライターに。現在はクラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家やバレエダンサーへのインタビュー多数。著作に、『名曲案内 クラ女のショパン』(共著/河出書房新社)、『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のススメ』(河出書房新社)。

[ twitter ] [ facebook ] [ officialsite ]

くるみ割り人形

3大バレエのひとつ「くるみ割り人形」。20世紀を代表する振付家、ジョージ・バランシンが育てた世界有数のバレエカンパニーによる名演。ニューヨーク・リンカーンセンター製作で劇場公開の映像を初収録。

2017年4月19日発売 DVD 4,800円+税 カラー 2011年12月収録 本編:99分

A LINCOLN CENTER MEDIA Production Ⓒ2011,2015 Lincoln Center for the Performing Arts, Inc. Ⓟ 2016 / Artwork & Editorial Ⓒ 2016 C Major Entertainment GmbH, Berlim Photos Ⓒ Paul Kolnik Choreography Ⓒ The George Balanchine Trust | BALANCHINE is a Trademark of the George Balanchine Trust

FAIRY
http://www.nbs.or.jp/
Pony Canyon
PageTop