COLUMN

2017.4.19.WED | COLUMN

バレエで結ばれた天上の愛

『ラ・シルフィード』『ファラオの娘』等、ロマンティック・バレエの画期的な復刻上演を果たした振付家ピエール・ラコットと、彼のミューズでありオペラ座の伝説のエトワールであるギレーヌ・テスマーの、長年にわたるバレエ芸術への貢献と情熱を記録したドキュメンタリー映画。1932年生まれのラコットと1943年生まれのテスマーが出会ったのは、テスマーが19歳のとき。「その美しさと才能に釘付けになった」ラコットは、若きバレリーナから無限の創造力を得て、11歳年下の彼女と結婚をする。「私たちはつねにお互いを高め合ってきた。彼を驚かせるのに夢中だった」と語る現在のテスマーは、昔のほっそりとした美貌こそ失われたが、穏やかな気品に溢れている。自然に囲まれた豪華な邸宅の広々とした庭でくつろぐ夫婦の姿に、バレエで結ばれた天上の愛を見る想いがする。

貴重な舞台映像

ラコット自身が現役ダンサーであった50年代の記録も、モノラルのテレビ映像で見ることが出来る。ノーブルでほっそりとした容姿はクラシックの貴公子そのもの。テスマーに振り付けた初期の作品や、若きミカエル・ドナールとともに踊った復刻版『ラ・シルフィード』も収録され、妖精そのもののテスマーと、詩情あふれるジェイムズを踊ったドナールの美しい姿には溜め息がこぼれる。ラコットがボリショイに招かれて実現した『ファラオの娘』の復刻上演の映像では、若々しいセルゲイ・フィーリンが活躍する様子も。ラコットが「最後に制覇した劇場」と語るマリインスキー劇場ではペローの『オンディーヌ』が復刻され、ここではエフゲーニャ・オブラスツォーワ(ボリショイ)とレオニード・サラファーノフ(ミハイロフスキー)が「マリインスキー・ダンサーとして」踊っているのも、ここ数年のバレエ界の激動の変化を物語っているかのようだ。

「ここは世界一の劇場」

後半には現在も活躍するオペラ座のエトワールたちの稽古の様子がふんだんに映し出される。リュドミラ・パリエロとマチュー・ガニオに厳しい指示を出しながらも、「私がバレエを踊ることで得た喜びを、若いダンサーにも感じてほしい」と語るテスマー。2010年に日本でも上演された『三銃士』のリハーサルでは、マチアス・エイマンの見事な演技に稽古場から歓声が沸き起こる。終わり近くに登場するローラン・イレールの渋い姿も印象的だ。ラストシーンで、オペラ座の舞台に立ち「ここは世界一の劇場」と語るラコットの言葉には、真実の重みが宿っている。

Profile
小田島久恵 音楽ライター
岩手県生まれ。岩手大学教育学部特設美術科卒。『rockin'on』誌で編集を務めたのち、フリーのライターに。現在はクラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家やバレエダンサーへのインタビュー多数。著作に、『名曲案内 クラ女のショパン』(共著/河出書房新社)、『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のススメ』(河出書房新社)。

[ twitter ] [ facebook ] [ officialsite ]

バレエに生きる

ロマンティック・バレエの復刻に多大なる貢献を果たした偉大な振付師ピエール・ラコットと、彼にとっての"ミューズ"であり、エトワールとして引退後も多くの若手を育てるギレーヌ・テスマーの夫婦が世界をめぐり、人生のすべてをバレエに捧げた歩みをつづるバレエファンならずとも必見のドキュメンタリー映画。1954年から2010年までの60年に及ぶバレエの歴史の中で、これまで語られてこなかった歴史を紐解きながら、ルドルフ・ヌレエフほか著名なダンサーの語り継がれる名シーンの映像を交えた豪華絢爛たる、まさに「バレエに生きる」愛の記録。

DVD 4,800円+税 カラー・一部モノラル 95分 1954年~2010年 日本語字幕
アンテ・ロープ&フェアリーオリジナル特典:ポストカード入り

FAIRY
http://www.nbs.or.jp/
Pony Canyon
PageTop